5 avril 2016

辻井信行さんのショパンリサイタル

時々、ピアノのコンサートに行くのですが、とても豊かな気持ちになります。
先週、サントリーホールにて辻井信行さんのオールショパンのプログラムの
コンサートに行ってきました。


曲目は、ワルツが3曲、エチュード全12曲、バラード全4曲でした。
辻井さんの指が奏でる音質は、そのまま彼自身を表しているかのように
限りなく純粋なものでした。
心が洗われるような気持ちになりました。
特にワルツは素晴らしかったです。
エチュードは、何曲か選んで弾かれ、一曲ごとに、終わったら拍手と
言うことが多いものですが、今回は1番から12番まで、全ての曲を
通しで弾かれました。
まるで、ピアノによる音の劇が一幕一幕、展開しているようでした。
大きなホールなのに、小さな個人のサロンで聞いているような
とても贅沢な気分を味わいました。
バラードも素晴らしかったです。
自分が中学生位の時だったか、父が祖父からもらいうけたSP盤で
19世紀後半、20世紀前半のピアノのヴィルトゥオーゾ達のレコードを
かけていました。
その中に、アルフレッド・コルトーのショパンがあって、バラードを聴いた時は
自分の心の中で、後にも、先にも彼を超えるショパン弾きは出てこない
だろう、と思ったものでした。
実に、劇的な世界。 そして、絢爛で華々しいプレイエルピアノの音。
そっと子守唄や舟歌に耳を澄ますような、揺ら揺ら優しい地中海の波の音。
突然、激しい暴風や稲光、雷雨が襲いかかり、荒れ狂う波の音。
苦悶し、激昂し、半狂乱状態のショパンの姿まで目に浮かぶ。
かと思うと、パリのサロンで優雅に男女がワルツを踊っている様子。
ポーランドでの幸せな子供時代の様子。
ショパンの生涯が走馬灯のようにめくるめき、様々な情景が次々と現れる。
右手も左手も、ピアニシモからフォルテシモまで、一体どれだけの段階が
あるのだろう、と思う位、グラデーションに富み、深い音の彫刻のよう。
タイムスリップできたら、プレイエルホールでコルトーの演奏を聴きたい、
と思ったものでした。
ショパンは病弱で波乱万丈の短い一生だったけれど、とても豊かな時間を
過ごしたのだろうな。
芸術が熟すには大切なことですね。
辻井さんもこれから、たくさん豊かな人生経験を積んで、益々円熟した
演奏となることを期待しています。
さて、サントリーホールのコンサートが終わった後は、いつも
お気に入りのオ・バカナルカフェに行ってフランス気分に浸ります。


カフェごはんです。
まずは、オニオングラタンスープ。
チーズのこんがり焼けた香りがプーンとしてたまりません。
オニオンのうまみたっぷりのスープの中に浸ったフランスパンに溶ろける
チーズ。 う~ん、幸せ!!の味です。


そして、キーシュ。 このどーんとしたサイズはフランスらしい。
定番の味を楽しみました。
最後は、フランスのカフェそのままのカップに入ったコーヒーでしめました。
フレンチなデザートのタルトも食べたかったけど、キーシュで満腹になり、
やめておきました。
あ~、おいしかった。 満足。
たま~に、行くから満足度もアップします。
今度は何を聴きに行こうかな?
ピアノもいいけど、ヴァイオリンもいいな、なんてね。